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翻訳英文法公式集 (Rulebook of English Grammar in Translation)

<< 目次 >>


公式 1 語順―原文の流れを生かす

(1) 原文の語順にできる限り従う。
(2) 特に、接続詞や前置詞、それに、関係代名詞のからんでいる場合に注意する。

≪例文 1≫
The lake was calm and beautiful with some swans swimming on its placid surface.
湖は静かで美しかった。白鳥が数羽、波ひとつない水面を泳いでいた。

公式 2 名詞の中に文を読みとる

名詞は機械的に訳してはならない――
(1) 名詞の中に動詞的な意味がふくまれていないかどうかを確かめる。
(2) 動詞的な意味がふくまれていれば主語・目的語などを補って文章の形に読みほどく。
(3) 適切な接続詞を補って訳文にまとめあげる。

≪例文 2≫
Ignorance of foreign customs can result in unexpected misunderstandings.
外国の習慣を知らないと、思いがけない誤解を生ずることがある。

公式 3 主語を表す所有格

名詞と代名詞の所有格が、意味上次に来る名詞にたいして主語の関係にある場合は
    所有格+名詞 → 主語+動詞
と読みほどき、適当な接続詞を補って訳文にまとめる。

≪例文 3≫
I was able to see him just for five minutes on his arrival.
彼が着いた時、なんとか5分だけ会えた。

公式 4 目的語を表す所有格

名詞と代名詞の所有格が、前後関係から判断して、次に来る名詞にたいして目的語の関係を表わしている場合――
    所有格+名詞 → 動詞+目的語
の形に読みほどいて訳文にまとめる。

≪例文 4≫
The city's destruction by the enemy did not bring the war to an end.
敵がこの町を破壊したあとも、戦争は終わらなかった。

公式 5 <of +名詞>―主語を表す場合

A of Bという形に出会ったら――
(1)まずこの of が主語を表わすか、目的語を表わすかを確認し、
(2)主語であるとわかれば「〜が…する」という関係を読みとり、
(3)それに応じた文章の形に読みほどいてから訳す。

≪例文 5≫
The powerful reasoning of his opponent drove him to admit his error.
相手が実に強力な論理を展開したので、彼も自分の誤りを認めざるをえなかった。

公式 6 <of + 名詞>―目的語を表す場合

A of Bという形が出てきたら――
(1)まずこの of が主語を表わすか、目的語を表わすかを確認し、
(2)目的語であるとわかれば「〜を…する」という関係を読みとり、
(3)それに応じた文章の形に読みほどいてから訳す。

≪例文 6≫
His application of the rule to this case was in a sense quite natural.
彼がこの規則を今回のケースに当てはめたのは、ある意味ではきわめて当然なことだった。

公式 7 無生物主語の構文

(1) 無生物主語を副詞句(節)に転換する。
(2) 他動詞を自動詞(受け身をふくむ)に転換する。
(3) もとの目的語を新しい主語に置きなおす。

≪例文 7≫
Bad weather prevented me from going out.
天気が悪かったので、私は外出できなかった。

公式 8 A Good Swimmerの型

〈形容詞(A)+動作者(Bをする者)〉の型は、「BをするのがAである」の意味を表わす場合がある。このような場合は、その意味に即して、文章の形を読みほどいて訳す。

≪例文 8≫
He was the fastest runner in our c1ass.
彼は、クラスで走るのがいちばん速かった。

公式 9 人称代名詞、指示代名詞

(1) 代名詞は原則として切る。
(2) ただし、切っては文意がわかりにくくなる場合は、ただ「彼」とか「それ」とか訳すのではなく、元の名詞にもどして訳出する。
(3) 場合によっては、「自分」という表現を活用する。

≪例文 9≫
My mother felt rather ill that morning, but she said nothing about it.
その朝、母はかなり気分が悪かったが、ひとことも口には出さなかった。

公式 10 反復を避けるためのthat, one

反復を避けるために用いられた that や one の訳し方は、一般の代名詞の訳し方の公式のうち、(1)と(2)については共通である。
(1) 原則として切る。
(2) ただし、切って文意がわかりにくくなる場合は、ただ「それ」とか「もの」とか訳すのではなく、元の名詞にもどして訳す。

≪例文 10≫
He said that the voice was certainly that of a woman.
その声は、確かに女性の声だったと彼は言った。

公式 11 関係代名詞 (1)―接続詞を補う

関係代名詞を訳そうとする時、単なる英文解釈の方法ではうまく処理できなければ
(1) まず、適当な接続詞を使って分解することはできないかどうかを検討し、
(2) ふさわしい接続詞が見つかれば、〈接続詞+代名詞〉の形に分解して訳出する。
(3) 接続詞としては、if, when, though,
since(理由)などを利用できる場合が多い。また、andやbutを使って、いったん切るという方法も活用できる。

≪例文 11≫
She complained loudly to the shopkeeper, who answered her mildly.
彼女は大声で店員に文句を言った。だが店員はおだやかに応対した。

公式 12 関係代名詞 (2)―分解する

関係代名詞を訳そうとする時、接続詞を補う、あるいはいったん切るといった方法でもうまく処理できなければ――
(1) 一度、関係代名詞を外して内容をよく把握しなおし、
(2) その内容を、あらためて日本語として表現しなおす。
(3) 関係代名詞の前に前置詞のついている場合は、この方法を取らざるをえない場合が多い。

≪例文 12≫
This is the point beyond which I've never been.
ここから先は、私もまだ行ったことがありません。

公式 13 形容詞・副詞を述語に―many, some

many(a lot of, a great many, etc.)やsomeが出てきたら、ただ機械的に「多くの〜」「ある〜」と訳すのではなく――
(1) 述語に直したほうがよいかどうか判断する。
(2) よいとなれば、「〜が多い」「〜もある」といった形に訳す。
(3) some については、“some ...
others...”の形を取っている場合は(代名詞として使われた時をふくめて)、この方法が効果的な場合が多い。また“sometimes”さらには“often”などについてもこの方法を応用できる。

≪例文 13≫
We often go to the station by bus, but sometimes on foot.
駅まではバスで行くことが多いが、歩いて行くこともある。

公式 14 文修飾の副詞

文修飾の副詞を翻訳するには――
(1) 副詞が文修飾かそれとも普通の用法かを見分ける。
そのためには、(a)文頭、あるいは文末に置かれる、(b)コンマで区切られている、(c)It is〜that ...と書き換えられる、などの特徴が目安になる。
(2) 文修飾の副詞であるとわかれば、述語として訳出する。
(ただし、「幸いにも、幸いなことに」といった形で訳すことのできる場合も少なくない。ex. Happily he didn't die.)

≪例文 14≫
Naturally he declined the offer.
彼がその申し出を断ったのは当然だ。

公式 15 形容詞を副詞に ―all, every, each

all, every, each あるいは both などが形容詞として用いられている時は――
(1) そのまま形容詞として訳すのではなく、
(2) 副詞に読み換えて訳すと効果的である。
(3) many, most さらには一般の形容詞についても、同じ手法を活用できるケースがある。

≪例文 15≫
All big cities have traffic problems.
大都会はどこも交通問題を抱えている。

公式 16 比較級・最上級

比較表現の訳の目安として次のような方法を挙げることができる。
(1)「〜とくらべると」といった表現を導入する。「になる」と、動詞を導入することも効果的だ。
(2) いったん切る。
(3) “more than any other〜” → “Nothing is so ... as〜”という変換も、必要に応じて利用する。

≪例文 16≫
This shop carries more foreign books than any other in Japan.
日本中で、この店ほど洋書をたくさん置いているところはない。

公式 17 否定のからんだ比較表現

一般の比較表現の場合と同様、目安として次のような方法を挙げることができる。
(1) できるだけ原文の流れに従う。
(2) そのためには、いったん切るという方法が有効である。
(3) その後で、必要な言葉を補足する。

≪例文 17≫
No other planet comes so close to the earth as Venus.
惑星の中で、いちばん地球に接近するのは金星である。

公式 18 as... asの構文

as ... asの構文の場合も、一般の比較表現と同様、目安として次のような方法を挙げることができる。
(1) できるだけ原文の思考の流れに従う。
(2)そのためには、いったん切るという手法が、as ... asの構文については特に効果的である。
(3) いったん切った後は、「…と同じである、…に劣らない」などの表現でまとめる。

≪例文 18≫
There are not as many trees around here as three years ago.
この辺りは木が少なくなった。3 年前はもっとあったのだが。

公式 19 受動態 (1)−自動詞を使って能動態に

受動態が出てきたら、ただ機械的に受け身で訳すのではなく、かならず一度、能動態に置き換える可能性はないかどうか、検討してみる習慣を身につけること。
この転換の方法として、まず第1に――
自動詞を使って能動態に訳すことはできないか、考えてみる。

≪例文 19≫
The game was called off on account of the darkness.
日没で試合は中止になった。

公式 20 受動態 (2)―by ... を主語にして能動態に

受動態の後に、by...(時にはwith...)の形で動作主が示されている場合には――
(1) by...を新しい主語に置き換えて能動態に転換する。
(2) ただし原文の主語は、目的語に置き換えるのではなく、「〜は」の形で示すこともできる。

≪例文 20≫
The town was occupied by the guerrillas.
その町はゲリラが占領していた。

公式 21 受動態 (3)―暗示されたby ... を主語にして

受動態の後に、by ...が表に現われていない場合でも――
(1) 暗示された by ...を読み取って補い、
(2) この by 以下を新しい主語として能動態に転換する。
(3) ただし、ほとんどの場合、新しい主語を表に出して訳す必要はない。

≪例文 21≫
It is said [by them] that lightning never strikes twice in the same place.
雷は二度と同じ所には落ちないという。

公式 22 受動態 (4)―受動態のまま

英語の受動態は、原則的には能動態に変換して訳すのがよい。だがこの原則には、大事な例外がひとつある。英語の受動態が、日本語の受け身と同じように、「迷惑・被害」の関係を表わしている場合である。そこで――
 原文の受動態が、「迷惑の受け身」に相当する場合は、訳文でも受け身のままに残す。
 ただし、時には「被害」ではなく「受益」を表わす場合もある。この時は受身のままに残すか、または「〜してもらう」、「〜してくれる」といった表現を活用することもできる。

≪例文 22≫
This tree was struck by lightning last week.
この木は先週落雷にやられた。

公式 23 仮定法 (1) ―主語に仮定が含まれている場合

動詞が仮定法の形を取っているのに、if ...に相当する副詞節が見当たらない時は――
(1) まず、主語に仮定が含まれていないかどうかを検討し、
(2) 確かにこの型に属することがわかれば、
(3) 主語をif ...の形に読みほどいてから訳に取りかかる。
主語に仮定がふくまれている場合は、無生物主語や関係代名詞のからんでいるケースも多い。

≪例文 23≫
A man of common sense would have acted differently.
常識のある人なら、そんな行動はとらなかっただろう。

公式 24 仮定法 (2) ―副詞句に仮定が含まれている場合

動詞が仮定法の形を取っているのに、if...に相当する副詞節が見当たらない時は――
(1) ほかの副詞(句)に仮定が含まれていないか検討し、
(2) 確かにふくまれていることがわかれば、
(3) 副詞(句)を if ...の形に読みほどいてから訳に取りかかる。

≪例文 24≫
With a little more care, he could have avoided the danger.
もう少し注意していたら、危険を回避できたはずだ。

公式 25 仮定法 (3) ―発想を転換する

仮定法の英文を、そのままの形で訳したのでは、もうひとつ意味が的確に伝えられない場合は――
(1) 思い切って発想を転換し、
(2) 直説法で表現する方法を試みる。
こうした場合、“otherwise”という副詞がからんでいるケースにもよく出くわす。

≪例文 25≫
I wish I could have been of more use to you.
あまりお役に立てなくて、残念です。

公式 26 話法 (1) ―直接話法を生かす

英語では間接話法で書いてあっても、これを日本語に訳すためには、直接話法を効果的に生かした表現を工夫する。そのためには――
(1) 同じ内容を、直接話法で表現すればどうなるかを復元し、
(2) 次に、この表現を加味して、間接話法との中間的な形を見つけ出す。
(3) どの程度まで直接話法に近づけるか、間接話法とのバランスをどう取るかは、コンテクストによって判断する。

≪例文 26≫
He said that I looked really nice in that dress.
そのドレスは君によく似合うよ、と彼が言った。

公式 27 話法 (2) ―直接話法を掘り起こす

一見、話法とはなんの関係もない名詞(句)にも、直接話法的表現を掘り起こせる場合がある。つまり――
(1) 名詞(句)に疑問詞を導入し、
(2) 疑問文の形の名詞節に展開して、
(3) その時、本人が自問した言葉を再現した表現に近づけた形で訳す。

≪例文 27≫
Some people still don't understand the need for recycling.
なぜリサイクルが必要なのか、いまだにわかっていない人がいる。

公式 28 強調構文

It is〜that ...の型の強調構文は、ただ英文解釈の流儀を機械的に応用するのではなく
    「〜こそ…である」
と、原文の流れに従って訳す方法を取りたい。
必要があれば、こうして得た訳文にさらに工夫を加える。

≪例文 28≫
It is only when you have your own children that you realize the troubles of parenthood.
自分の子供を持ってみてはじめて、親の苦労がわかるというものだ。

公式 29 省略(共通)構文

共通の部分を省略していると思われる文に出会った時は――
(1) 省略されているものは何かを見きわめ、
(2) これを元にもどしてから訳に取りかかる。
(3) ただし、こうしてできた訳文に、日本語としても省略できる部分が残っていれば、切る。

≪例文 29≫
I've read many books written by him, but not all yet.
彼の著書はたくさん読んだが、まだ読んでいないものもある。

公式 30 接続詞 (1)―except, without

except あるいは without が現われたら、できるだけ原文の語順にそって――
(1) まず except や without の前を先に訳してから、
(2) 後の文をつけ加える形で訳す。
(3) 特に not A without
Bの形を取っている時は、「Aをすれば、かならずBになる」と考えるべき場合が多い(これは実は、英文解釈でも「公式」と認めている)。

≪例文 30≫
You cannot commit a crime without being punished.
罪を犯せば必ず罰せられる。

公式 31 接続詞 (2) ― till, until, before

until や before の場合は、except , without
などの場合と違って、「公式」と呼べるほど明確なルールはない。ただ、一応の目安として――
(1) 語順に従って訳したほうがよくないか、
(2) ほかにもっと適切な訳し方はないか、
いろいろの表現の可能性を検討してみることが大事である。特に、
(3) 前半が否定形になっている時、
(4) 強調の構文と結びついている時
は注意が必要である。

≪例文 31≫
He did not get back before six o'clock.
彼が戻ったのは、6時を回ってからだった。